友達心理学入門

大人こそ知りたい、健全な「承認」で友情を深める心理学とその実践

Tags: 友情, 心理学, 承認, 人間関係, コミュニケーション

私たちは皆、誰かから認められたい、受け入れられたいという根源的な欲求を持っています。これを心理学では「承認欲求」と呼びます。特に社会経験を重ねた大人にとって、承認は仕事のモチベーションや自己肯定感に深く関わるものですが、友人関係においても、健全な承認は関係性を豊かにし、より深い信頼を築く上で非常に重要な役割を果たします。

職場で求められる成果に基づいた承認とは異なり、友人との間での承認は、お互いの存在そのものや、内面的な価値を認め合う側面に重きが置かれます。しかし、大人になると新たな友人を作る機会が減り、既存の友人との関係もマンネリ化しやすい傾向があります。深い悩みを打ち明けられる友人が少ないと感じている方もいらっしゃるかもしれません。このような状況で、意識的に健全な承認を友情に取り入れることが、関係性を再活性化し、より質の高い繋がりを育む鍵となります。

この記事では、心理学に基づいた「承認」の概念を踏まえつつ、大人の友人関係で健全な承認を与え、そして受け取るための具体的な方法や考え方をご紹介します。

友情における「承認」の心理学的な役割

心理学において、承認欲求は自己肯定感の形成や維持に不可欠な要素とされています。特に、マズローの欲求段階説における「承認の欲求」(尊厳の欲求)は、所属と愛の欲求が満たされた後に現れるもので、自己に対する肯定的な評価や他者からの尊敬、信頼などを求めるものです。

友人関係における承認は、主に以下の心理的な役割を果たします。

大人の友人関係における承認の特徴

大人になってからの友人関係は、学生時代の友人関係とは異なる側面があります。お互いに仕事や家庭など、それぞれの生活があり、必ずしも頻繁に会えるわけではありません。また、職場のように共通の目標や利害で繋がっているわけでもありません。

このような大人の友人関係においては、承認は以下のような特徴を持ちます。

職場では成果や役割に基づいた評価が中心になりがちですが、友人関係ではその人が「どんな人か」「どのように感じ、考えているか」といった、よりパーソナルな部分への承認が、関係性の質を決定づけると言えます。

健全な承認を「与える」ための実践

友人に対して健全な承認を意識的に与えることは、友情を深めるための重要なステップです。ここでは具体的な方法をいくつかご紹介します。

1. 存在承認と傾聴

友人が話したい時に、ただそばにいて話を聞くことは、何よりも強い存在承認です。「あなたの話を聞く時間を作る価値があるほど、あなたの存在は大切だ」というメッセージになります。

2. 過程承認と具体的な行動への言及

成果だけでなく、そこに至るまでの努力や過程、そして具体的な行動を認めることで、相手は「自分の頑張りを見てくれている」と感じ、大きな励みになります。

3. 特性承認と「I(アイ)メッセージ」

相手の性格や考え方といった内面的な特性を認め、それが自分にどのような影響を与えているかを「I(アイ)メッセージ」で伝えることで、より誠実で響く承認になります。

健全な承認を「受け取る」ための実践

承認は与えるだけでなく、健全に受け取ることも大切です。褒められることに慣れていない、あるいは謙遜しすぎてしまうという方もいらっしゃるかもしれませんが、友人からの承認を適切に受け取ることは、関係性の健全性を保つ上でも重要です。

1. 素直に受け取る姿勢

褒められたり、感謝されたりした時に、過度に否定したり謙遜したりせず、「ありがとう」と素直に受け止めることが最初のステップです。

2. 承認された内容について対話を深める

承認されたことをきっかけに、さらに会話を深めることで、相手は「自分の承認が届いた」と感じ、コミュニケーションが活性化します。

3. 内的な承認と自己肯定感

もし、友人からの承認が得られにくいと感じる時期があっても、自己肯定感を保つことは可能です。過去の自分の成功体験や努力を振り返り、自分で自分を認める「内的な承認」も大切です。

職場での経験と友人関係の承認

社会経験が豊富な読者の方々の中には、職場で求められる承認(成果、評価、昇進など)と、友人関係で得られる承認との違いに戸惑うことがあるかもしれません。あるいは、職場で十分な承認が得られず、友人関係に心の拠り所を求めている方もいらっしゃるでしょう。

友人関係で得られる健全な承認は、職場での承認とは異なる、より個人的で情緒的な充足感を与えてくれます。この充足感は、仕事でのストレスを和らげたり、自己肯定感を高めて、職場での人間関係にもポジティブな影響を与える可能性があります。

友人との間で健全な承認が循環する関係を築くことは、人生全体の幸福度を高める上でも非常に価値があると言えます。

健全な承認関係を築く上での注意点

最後に、健全な承認関係を築く上で注意すべき点を挙げます。

まとめ

大人の友人関係において、心理学に基づいた「健全な承認」は、関係性のマンネリ化を防ぎ、より深い信頼と安心感を育むための強力なツールです。相手の存在や内面、努力や具体的な行動を誠実に認め、感謝を伝えること。そして、友人からの承認を素直に受け止めること。これらの実践は、お互いの自己肯定感を高め合い、困難な時にも支え合える揺るぎない友情を築く礎となります。

忙しい日々の中でも、友人とのコミュニケーションの中に意識的に「承認」を取り入れてみてはいかがでしょうか。それはきっと、あなたの友情をさらに豊かで、かけがえのないものにしてくれるはずです。